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事例演習刑事訴訟法【設問5】 一罪一逮捕一勾留 解答例

1  前段

1 Xは、既に、A事実につき常習傷害罪により逮捕拘留されているところ、常習一罪の一部をなすB事実について逮捕勾留することは、一罪一逮捕一勾留の原則に反しないか。

1一罪一逮捕一勾留の原則とは、同一の被疑事実について数個の逮捕・勾留をすることは許されないとする原則をいう。これは、明文はないものも、同一事実につき身体拘束の蒸返しを認めれば、厳格な法定拘束期間を定める(203条以下)趣旨に反することから認められる。

 そして、わが国では実体法で罪数の概念を採用し、訴因単位ではなく実体法上一罪とされる事実ごとに1個の刑罰権が生じ、一時不再理効は1罪とされる事実全てについて生じるところ、刑事訴訟法は公判手続のみならず捜査段階の手続も、刑罰権実現を目的とする手続であるから、「一罪」とは、公訴事実におけるのと同様に実体法上一罪をいう。

2)本件をみると、既に逮捕拘留されたA事実と、これと常習一罪となるB事実とは実体法上一罪にあたる

3)したがって、一罪一逮捕一勾留の原則から、改めてXを逮捕することはできないのが原則である。

2 もっとも、一罪一逮捕一勾留の例外は認められるか

 そもそも、一罪一逮捕一勾留の趣旨は、逮捕・勾留の蒸返しを防ぐため、一回の身体拘束で一罪の関係にある被疑事実の全部について、同時に捜査することを求めることにある。そこで、同時処理が不可能であった場合は、例外的に、改めて逮捕勾留することが認められると解する。そして、上記例外を広く認めると前述の一罪一逮捕一勾留の原則の趣旨が没却されるため、当初の逮捕・勾留前に発生した事実については、同時処理可能であったとみなすべきである。(観念的同時処理可能説) 

 本件をみると、B事実は、A事実についての逮捕勾留の前に発生しているため、同時処理が可能であったとみなされる。

 したがって、例外は認められない。

 よって、B事実によリXを逮捕勾留することは許されない。

 

2  後段

 常習一罪の一部をなすC事実について逮捕勾留することは、一罪一逮捕一勾留の原則に反しないかについて、前述の基準により判断する。

 C事実は、A事実についての保釈中になされた傷害行為であるところ、A事実の逮捕勾留前に発生した事実であるから、同字処理が可能であったとは言えない。

 したがって、上述の例外が認められる場合に当たり、一罪一逮捕一勾留の原則は適用されない

 よって、C事実によりXを逮捕勾留することは許される。

以上