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予備R2法律実務基礎(刑事) 解答例

1 設問1 

1 (1

 Bは、事件当日、午後2時頃から午後945分頃まで外出しており、帰宅時に、大量に血を流して倒れているVを発見している。そこで、Vは、午後2時頃から午後945分頃までの間に、殺害されたと考えられる。*犯行時刻

 そして、Bは、外出する直前の午後145分頃に、V方一階居間にある応接テーブル上面を全体に渡り拭き掃除をしている。そこで、応接テーブルの上面からAの指紋が付着していたという事実は、Aが本件犯行時刻にV宅に赴いたという事実推認させる。これは、AV殺害のためV宅に赴き、その際にテーブルに触れ指紋を残したと考えることと矛盾しない。

 したがって、Aの指紋が付着していた事実は、A犯人性を推認させる間接事実となる。

 しかし、V宅にAが赴いたからといって、必ずしも殺害を犯したとはいえず、話し合いでだけをして帰ったという可能性がある。*反対仮説

 よって、推認力は限定的である。

2 (2

 信用性のあるAの友人Cの供述によれば、Aは、凶器として使用したナイフをO丁の竹やぶに捨てたと供述している。そして、かかるCの供述通り、Cの携帯には着信履歴があり、さらに、上記竹やぶからはVDND型と一致する血痕が付着したナイフが発見された。また、司法解剖医の供述から、当該ナイフはVの死因である胸部刺創を形成した凶器と認められる。

 そして、当該ナイフが上記竹やぶに捨てられていることは、A供述以前には、捜査官は知り得なかったのであり、Aの供述は、犯人しか知り得ない事実を述べたものといえ、秘密の暴露に当たる。したがって、Aの上記供述の信用性は認められる。

 本件犯行に用いられた凶器を竹やぶに捨てたAが、友人Cに対し「人をナイフで殺した」と述べているのであるから、AがナイフでVを刺したことが合理的に推認できる。

 したがって、Aの犯人性を十分に推認できる。

Aの供述の信用性あり∵秘密の暴露→Aが凶器を竹やぶに捨てた事実→Aが犯人

*百選76事件:草加事件民事上告審判決(自白の信用性)

 

2 設問2

1 (1

1)手段

 Aの弁護人は、類型証拠開示請求(刑事訴訟法316条の151項)という手段をとるべきである。

2)明らかにすべき内容

ア 同条31号イ

 まず、犯行時刻頃にV方から物音を聞いた者の供述録取書は「被告人以外の者の供述録取書」(同条16号)に当たる。そして、証拠14は、同時刻頃にV方から男性の大声が聞こえたとのW2の供述であり、その者以外のV方から物音が聞こえた旨の供述は、「警察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」に当たる。

 したがって、6号の証拠に当たる。*類型該当性

 次に、「開示の請求に関わる証拠を識別するに足りる事項」としては、「W2の他に犯行時刻頃にV方から物音を聞いた者の供述録取書等」とする。

イ 同条31号ロ

 本件では、AVに対する殺意の有無が争点となっている。W2の供述は「殺すぞ」などと怒鳴りつける男性の声を聞いたというものであるところ、殺意の有無との関係において、W2の供述の証明力を判断するため、これと矛盾する供述の有無を確認することが重要である。また、被告人の防御のため、当該開示が必要である。

 よって、弁護人としては、以上の事項を明らかにするべきである。

 

2 (2

 上記の通り、証拠開示の重要性と必要性は認められる。また、V方から物音が聞こえたという事実の開示によるプライバシー侵害の程度は軽微であり「弊害」には当たらない。したがって、証拠開示は「相当」と認められるため、検察官は証拠を開示したと考えられる。

 

3 設問3

 Cの証言のうち「むかついたので人をナイフで刺してやった」というAの供述は、伝聞証拠にあたり、証拠能力が否定されないか。

 供述証拠は、知覚・記憶・叙述を経るため、誤りの入るおそれが高く、反対尋問(372項前段参照)で誤りを是正する必要がある。そこで、伝聞証拠とは、公判廷外の原供述を内容とする証拠であって原供述内容の真実性の証明に用いるものをいう。また、内容の真実性が問題となるかどうかは、要証事実との関係で相対的に決する。

 本件では、Aの殺意の有無が争点となっているから、検察官は、Cの証言により、Aの殺意を立証しようとしていると考えられる。そこで、上記Aの供述は、内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たる。

 もっとも、Aの供述は、不利益な事実の承認を内容とするものであり、任意性も認められるから、3241項が準用する3221により、伝聞例外の要件を充足する。

 したがって、裁判所は証拠排除決定をするべきではない。

 

4 設問4

1 まず、被疑事実は殺人罪であるから、891号にあたり、必要的保釈は認められない。そこで、Aには葬儀に出ることができないという不利益が生じるから、職権保釈が認められ得る。

2 次に、勾留の執行停止(95条)が考えられる。Aの父親が死亡しておりAは父の葬儀にだけは出席したいと考えている。葬儀は一度だけの儀式であり、かかるAの希望は人情としては尊重されるべきであるから、かかる措置は、「適当」といえる。

 もっとも、上記の手段は、いずれも裁判所の職権にのみ行われるもので、当事者に申立権のはないから、当事者は職権発動を促す申出ができるに留まる。

以上