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予備試験R 1民法 解答例

第1 設問1

1 DCに対し、所有権に基づく返還請求権としての本件建物収去土地明渡請求をしている。かかる請求が認められるには、本件土地の自己所有、相手方占有が認められることが必要であるところ、Cは本件土地を占有している。ではDは所有権を有するか。

 CAから平成2041日に本件土地の贈与を受けているため、Cが所有者である以上、その後にAを相続し所有権を取得したBは、所有権を取得しないとも思える。

 もっとも、物権変動は、登記により初めて完全となり、登記がなければ不完全にしか効力を生じないから、登記がされない間は譲渡人は完全な無権利者とはならない(不完全物権変動説)。

 本件でも、Cへの移転登記をせずにAは死亡しているから、本件土地も相続財産となり、Bはこれを相続(896条本文)する。そのため、かかるBから抵当権の設定を受けて、その実行・競売を経たDは、所有権を取得する。また、「第三者」(177条)とは、当事者及びその包括承継人以外のものであって登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいい、Cはこれに当たるが、Dは所有権移転登記を経ているから、対抗できる。

 したがって、Dは、所有権を有するから、上記請求は認められ得る。

2 これに対し、Cは、占有権限として、法定地上権388条)があると主張すると考えられる。

 法定地上権の成立要件は、抵当権設定当時に土地上に建物が存在すること抵当権設定当時に建物と土地の所有者が同一であること、土地と建物の双方又は一方抵当権が設定されたこと、抵当権の実行によって土地と建物の所有者が異なったことである。

 本件を見ると、平成2861日の抵当権設定当時から、本件土地上には本件建物が存在した()。また、抵当権の実行により、土地の所有者はD、建物の所有者はCとなっている()。

 もっとも、Cは、上述の通り、所有権移転登記を経ていなかったため、土地の所有者とはいえず、を満たさないとも思える。

 しかし、Cの登記が未了であるとしても、所有権移転自体は生じているのであり、Cは、権利移転を退行することができないに過ぎない。そもそも、法定地上権の趣旨は、土地の建物のための用益権がないことで建物の存続が不可能となることによる社会経済的の損失を防止し、地上建物の存続を図ることにある。そして、かかる趣旨は所有権を対抗できない場合にも妥当する。

 したがって、上記要件を満たすから、Cの主張は認められる。

 以上より、Dの請求は認められない。

 

第2 設問2

 Cは、Dに対し、所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記手続請求をすることが考えられる。かかる請求が認められるには、本件土地の自己所有、相手方名義の抵当権設定登記の存在が認められることが必要であるところ、本件土地にはDを抵当権者とする抵当権設定登記が存在する。では、Cの所有権が認められるか。

1 上述のように、Cは生前のAから本件土地を贈与をされているが、D177条の「第三者」にあたるから、登記をしていないCDに対し対抗できない。

2 そこで、Cは、本件土地を時効所得(1622)しており、Dは時効取得前の第三者であるから、Dに対して登記なくして所有権を対抗できると主張することが考えられる。

1)時効取得の要件を満たすか。

 Cは、平成20831に本件土地の占有を開始し、平成30821日時点でも占有しており、10年が経過している。

 次に、「他人の物」といえるか。

 時効制度の趣旨は、永続した事実状態の尊重にあるところ、かかる趣旨は、登記を経ていないなど所有権の取得を第三者対抗できない等の場合において、自己の所有物についても妥当するのであり、162条が「他人の物」と規定したのは、通常は自己の物について取得時効を援用することは無意味であるからにすぎず、自己の物について時効取得の援用を許さない趣旨ではない。そこで、「他人の物」であることは例外的に要件とならない。

 また、平穏、公然、善意、無過失の推定(186条、188)を覆す事情はない。🌟

 したがって、時効取得が認められる。

2)では、登記なくして対抗できるか。

 ここで、時効取得は原始取得であり、時効取得者と時効取得前の第三者は物権変動の当事者とはならない。しかし、一方の権利取得の結果として他方が権利を失うという関係は物権変動の場合と同様である。そのため、時効取得前の第三者は、時効取得者との関係では物権変動の当事者と同視でき、「三者」には当たらない。したがって、時効取得者は、登記なくして時効取得を対抗できる。

 本件においても、Dは、時効完成前に抵当権の設定を受けたのであるから、Cは、登記なくして対抗できる。

 以上より、上記請求は認められる。

以上