ぶろぐ

受かる受かる受かる

予備試験H30民法 解答例(改正法)

設問1

1 ACに対し、債務不履行に基づく損害賠償(4151項本文)を請求することが考えられる。

 たしかに、CAと直接の契約関係にないから、「債務者」にあたらないとも思える。しかし、雇用契約等の法律関係に基づき、特別な社会的接触関係に入った当事者は、当該法律関係の付随義務として、信義則(12)相手方の生命健康等を危険から保護するよう配慮する義務(安全配慮義務を負う。具体的には、労働に関連する物的環境を整備する義務と、労働者の人的配備を適切に行う義務を内容とする。

1)本件で、BC下請負人であり、ABに雇用された従業員である。また、Cは、A及びBに、建物解体用の什器、器具等を提供し、Cの従業員に対するのと同様に、作業の内容、場所、具体的方法につき指示を与えていた。 そのため、Aは、実質的にCの指揮監督下にあった。したがって、ACは特別な社会的接触関係に入っていたといえるから、CAに対し安全配慮義務を負う。

2)では、C債務不履行があるか。

 たしかに、Cは、Bに対しては、Aによる柵の退去作業が終了してから、家屋の1階壁面を破壊するように指示していたのだから、安全配慮義務の違反がないとも思える。しかし、建築作業は事故発生のおそれが高いのだから、Cは事故を防ぐために命綱や安全ネットを用意しておくべきであったのに、これをしていない。したがって、かかる安全配慮義務の懈怠は債務不履行にあたる。

3)上記について、Cに免責事由は認められない(4151項但書)。

4Aには、本件事故により重傷を負っているから、「損害」がある、また、上記のようなCの行為により、Aが怪我をすることは当然に予測できるから、損害と債務不履行との間には相当因果関係が認められる。

5)したがって、Aは上記請求をすることができる。

 

2 ACに対し、使用者責任に基づく損害賠償(715条、709条)を請求することが考えられる。

1)「他人を使用する者」とは、報償責任の原則から、実質的に指揮監督すべき地位が認められる者をいう。

 本件で、BCに雇用関係はない。しかし、上述のようにBは実質的にCの指揮監督下にあったのだから、Bは「他人を使用する者」にあたる。

2Cは建築業を営んでおり、Bの行為は解体作業であるから、「事業の執行について」といえる。

3Bは、Cの指示にもかかわらず、Aの撤去作業の終了を確認せずに家屋の破壊作業を開始しているから、Bに「過失」がある。

4)上述のようにAには「損害」があり、上記行為と損害の因果関係も認められる。

5)これに対し、Cは、「被用者の選任……損害が生ずべきであったとき」(7151項但書)にあたると反論することが考えられるが、Cが自らAの作業の終了を確認することにより事故は防ぐことができたのだから、かかる反論は認められない。

 

3 の比較

1時効について

 「人の生命または身体」の侵害による損害賠償請求権の消滅時効については、債務不履行不法行為のいずれの場合も、5年又は20消滅時効が定められている(1661項、167条、724条、724条の2)。したがって、両者について優劣はない。

2帰責事由、過失の主張立証責任について

 債務不履行において、債務者の帰責事由のないことの主張立証責任は、原則として債務者にある(4151項但書)。もっとも、判例は、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求において、義務の内容を特定し、義務違反にあたる事実を主張立証する責任債権者にあるとしている。不法行為における「過失」の主張立証責任も債権者にある。したがって、両者に優劣はない。

3遅延損害金の起算点について

安全配慮義務違反を理由とする損害賠償債務は、「期間の定めのない債務」であり、催告のときから遅滞に陥る(4123項)。不法行為に基づく損害賠償債務は不法行為に遅滞に陥る。したがって、の方がAにとって有利となる。

 

 

設問2

1 ア

 CFは、離婚届(765条)を出しているものの、共同生活は続けている。そこで、離婚そのものをする意思がないから、離婚意思がなく、離婚は無効となるとも思える。

 しかし、法律上の離婚をして共同生活は続けたいという意思も尊重するべきだから、離婚意思としては、離婚による法定効果を生じさせる意思があれば足りると解する(形式的意思説、判例)。

 本件で、CFは、相談の上法律上の離婚をすることを決定しており、離婚による法定効果を生じさせる意思がある。

 したがって、離婚は有効である。

 

2 イ

 Aは、Cに対する損害賠償請求権を保全債権として、詐害行為取消権(424条)に基づき、本件財産分与の取消すことが考えられる。

1)財産分与は、詐害行為たりうるか。

 離婚による財産分与身分行為であるから、財産分与が、夫婦の共同財産を分配生活の維持を図るという7683の趣旨に反して不相当に過大で、財産分与に仮託してされた財産処分と認められる特段の事情がない限り、「財産権を目的としない行為」(4242項)にあたり、詐害行為取消権の対象とならないと解する。

 本件で、本件土地は婚姻前からCが所有していたものである。また、Cは、離婚届提出時に本件土地及び本件建物のほかにめぼしい財産を持っていなかったのに、これらをFのみに分配している。したがって、7683の趣旨に反して不相当に過大といえる()。また、CFは、Aによるこれらの財産の差押を免れる目的で財産分与をしているから、財産分与に仮託してされた財産処分と認められる()。

 したがって、本件の財産分与は、詐害行為たりうる。

2)また、財産分与の時点で、Cは、唯一の財産である本件土地及び本件建物をCに渡す行為が債権者Aを害することにつき悪意であり(同条1項)、受益者Fも悪意であった(同条1項但書)。また、財産分与の以前に、ACに対する損害賠償請求権を取得している(同条3項)。さらに、Aの債権は「強制執行により実現」(同条4項)することができるものである。

3)詐害行為取消しの範囲

 詐害行為の目的物が可分である場合、自己の債権額の限度においてのみ取り消しを請求できる(424条の81項)のが原則である。しかし、目的物が不可分である場合、自己の債権額にかかわらず、詐害行為の全部を取り消すことができる

 本件でも、詐害行為の目的物は、不動産であり、不可分である。

 したがって、Aは、本件財産分与全てについて、取り消すことができる。

以上

予備R 1刑法 解答例

 

1 本件土地をAに売却した行為に、業務所横領罪(252)が成立するか。

 横領罪と背任罪は、委託信任関係を保護法益とする点で重なり合いが認められ、法益侵害が一つであるから、両罪の関係は法条競合となる。そこで、罰金を選択し得る背任罪よりも法定刑の重い横領罪の成否から検討すべきである。

1 「業務」とは、社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる事務のうち、他人の物の占有を内容とするものをいう。甲は、不動産業者であるから、不動産という財産の占有を反復継続して行っている。したがって「業務」にあたる。

2 「占有」とは、濫用のおそれのある支配力を本質とするものであって、これには、事実的支配のみならず、法律的支配も含まれる。また、明文はないが、占有離脱物横領罪(254条)との区別から、占有は委託に基づくことを要する。

 甲は、本件土地の登記済証や委任事項欄の記載のない白紙委任状を有しているから、不動産の処分行為が可能であったのだから、法律的支配が認められる。また、Vから抵当権設定の依頼に基づき占有するに至っている。

 したがって、Vとの委託に基づく「占有」が認められる。

3 そして、本件土地はVの所有物であるから「他人の物」にあたる。

4 「横領」とは、委託の任務に背いて、他人の財物につき権限がないのに所有者しかできないような処分をする意思たる不法領得の意思を発現する行為をいう。そして、不動産売買においては、登記を具備して初めて確定的に権利が移転したといえるから、登記がされた時点で、不法領得の意思が発現すると解する。

 本件で、甲は未だAに対し所有権移転登記をしていないから、「横領」 にあたらない。

 したがって、横領罪には未遂処罰規定がないため、上記行為に未遂が成立することはない(44)

 

3 上記行為に、背任罪(247条)が成立するか。

 甲は、Aから本件土地の抵当権の設定を依頼されており「他人のためにその事務を処理する者」にあたり、「自己」の利益を図る目的で、本件土地を売却するという「任務に背く行為」をしている。

 しかし、上述のように、未だ登記がなされておらず確定的に所有権が移転していない以上、「財産上の損害」は生じていない。 ?背任罪の既遂時期

 したがって、背任未遂罪が成立する(250条、247条)。

 

4 売買契約書二部に署名した行為に、私文書偽造罪及び同行使罪(1591項、1611項)が成立しないか。

1)まず、真正文書として他人に認識し得る状態に置く目的であったと考えられ、「行使の目的」がある。

2)「偽造」とは、作成者と名義人の人格的同一性を偽ることをいい、文書の作成者とは、文書に意思を表示した者、名義人とは、文書から認識される意思の主体をいう。

 本件で、甲は、文書に「V代理人甲」と署名しているところ、文書に意思を表示したのは甲であるから、作成者は甲である。そして、代理・代表名義を冒用して作成された文書について、文書により表示された意思内容に基づく効果は本人に帰属するのであるから、名義人は本人であると解する(判例)。

 したがって、名義人と作成者の人格的同一性を偽ったといえる。

3Aに文書を渡し、Aが申請文書として認識し得る状態に置いているから、「行使した」といえる。

4)よって、私文書偽造罪及び同行使罪(1591項、1611項)が成立する。

 

5 甲がVの首をロープで絞め、その後に海に落とした行為について

 首を絞めた行為(以下「第一行為」という。)と海に落とした行為(以下「第二行為」という。)は、殺意の有無につき意志の連続性に欠けるから、一体の行為とみることはできない。

1 第二行為は、保護責任者遺棄致死罪(218条、219条)の客観的構成要件に該当する。しかし、甲には死体遺棄罪(190条)の故意しかない。そこで、382により保護責任者遺棄致死罪の故意は阻却される。では、死体遺棄罪が成立するか。

 本件で、これらの犯罪において、客体は生きている人間か死者かで異なっており、保護法益は、生命・身体と、国民の宗教感情であるから、構成要件が実質的に重なり合うとはいえない。したがって、甲には死体遺棄罪の客観的構成要件該当性は認められず、同罪は成立しない。もっとも、第二行為は、 Vの死亡に対する予見義務違反、結果回避義務違反といえるから、「過失」が認められる。したがって、過失致死罪210条)が成立する。

2 Xは殺意をもって首を絞めているから、殺人罪の実行行為がある。

(1)では、因果関係があるか。

 本件で、たしかに直接の死因を作ったのは第二行為であり、介在事情の寄与度は大きい。しかし、殺害行為を行なった者が証拠隠滅しようと遺棄することはよくあることであり、第一行為の中に海中に遺棄されて死亡する危険も含まれているといえ、第一行為の危険が結果へと現実化されたといえる。

(2)次に、主観と客観の差異が、法的因果関係の範囲内にとどまっている場合には、上記非難が可能であり、故意が認められると解する。

 本件で、現実の因果経過と甲の認識していた因果経過はともに殺人罪の構成要件に該当し、法的因果関係の範囲内にある。したがって、故意は阻却されない。

 よって、第一行為に殺人罪が成立する。 

 

6 以上より、背任未遂罪、私文書偽造罪、同行使罪、過失致死罪、殺人罪が成立し、は手段と目的の関係にあるので牽連犯となり(541項後段)、Vの生命という同一法益に向けられたものとしてに吸収され包括一罪となり、これらは併合罪45条)となる。

以上

予備試験R2民訴 解答例

1 設問1

1 まず、本件の債務不存在確認訴訟は、金額の上限を定めていないため、訴訟物が特定されておらず、訴えは却下されるのではないか。

 判例は、債務不存在確認請求の訴訟物は、債務総額から原告の自認額を控除したその余りの債務の存否としている。そこで、上限額が明示されない場合には、訴訟物が特定できないため、訴えは却下されるべきである。しかし、後遺症障害が特定できない場合のように、上限額の特定が難しい場合にまで、常に訴え却下とすると、原告の裁判を受ける権利を奪うこととなる。そこで、契約型ではなく、不法行為の場合には、上限を明示しない訴えも認められると解する。

 本件は、交通事故という不法行為に基づく損害賠償債務の不存在確認訴訟であり、不法行為型である。

 したがって、本件では、上限の明示がなくても、適法である。

1 判例は、反訴が適法である以上、本訴の債務不存在確認訴訟は、もはや確認の利益が失われたとして、裁判所は訴えを却下すべきとしている。

 給付訴訟は確認訴訟より執行力を付与できる点で紛争解決に有効であるから、本訴の方法選択の適切性が失われる以上、本訴は不要となる。そこで、債務不存在確認訴訟において反訴給付訴訟が提起された場合には、本訴の裁判が既に熟しているなど特段の事情のない限り、本訴確認の利益は失われると考える。

 したがって、本件でも、裁判所は本訴については訴え却下判決をすべきとも思える。

2  しかし、本件において、反訴は明示的一部請求訴訟である。

 判例は、明示的一部請求訴訟における訴訟物は、明示された一部に限定されるとする。したがって、本件でも、反訴の訴訟物は明示された一部に限定される。

 そこで、本訴請求が却下されれば、反訴請求につき確定判決がなされても、残部について改めて請求する余地が残るため、かかる帰結は紛争の一回的解決の要請に反する。

 したがって、反訴は明示的一部請求訴訟である本件のような場合には、本訴は方法選択の適切性を失ったとはいえず、確認の利益は失われないと解する。

 よって、裁判所は、Yの損害は全て填補されたという心証を形成しているから、本訴請求については全部認容判決を下すべきである。

3 そして、既判力とは前訴確定判決の判断内容の後訴に対する通有性をいう。既判力の正当化根拠は、手続き保障充足に基づく自己責任にあり、手続保障は訴訟物たる権利又は法律関係の存否の判断にのみ及ぼせば足りること、及び、審理の簡略化・弾力化の観点から、既判力は訴訟物にのみ生じると解する。

 本件では、本訴の訴訟物は、XYに対する本件事故による損害賠償請求権であるから、この不存在につき既判力が生じる。

 よって、裁判所は、Yの損害は全て填補されたという心証を形成しているから、本訴請求については全部認容判決を下すべきである。

 

2 設問2

 反訴は、明示的一部請求訴訟であるから、明示された一部であるXYに対する本件事故による損害賠償請求権500万円の不存在につき既判力が生じている。一方で、本訴では、XYに対する本件事故による損害賠償請求権の不存在につき既判力が生じている。そこで、後訴におけるYの残部請求は本訴の既判力に抵触し、認められないとも思える。

 しかし、かかる帰結は、前訴で請求することができなかった後遺症について原告の救済を認めないこととなり、妥当ではない。そこで、判例一部請求理論を用いて解決する。つまり、前訴において、前訴の請求は基準時前に生じた損害に限定する趣旨であり、一部請求であるとの明示があったものとして、後訴での残部請求を認める。

 本件をみると、Yの訴えている前訴判決後に生じた手足の強い痺れは、本件事故に基づくものであるが、前訴の判決後に生じており、前訴で主張することは不可能だった。そこで、当事者としては、前訴においては当該損害を訴訟物に含めていないと考えることが合理的である。したがって、前訴と後訴は、訴訟物を異にする。(あてはめ前訴で主張することは不可能当事者の合理的意思から当該損害は前訴の訴訟物に含まれていないと考えるべき)

 よって、Yによる残部請求は認められる。

以上

予備試験R1憲法 解答例

1 乙校長が水泳の授業について代替措置を認めなかったことは、信教の自由(201項)に反しないか。

 

2 水泳の授業の履修を受けないという選択をする自由は、自己の信仰に反する行為を強要されない自由であり、信仰の自由として、201前段により保障される。

 

3 X日本国籍を有していないが、憲法上の保障は及ぶか。

 国民主権原理の下、国民とは日本国籍を有する者をいうところ、憲法3章は「国民の」としていることから、基本的人権の保障は外国人には及ばないとも思える。しかし、国際協調主義(前文参照)の観点から、権利の性質上日本国民にのみ認められると解されるものを除き、外国人にも基本的人権の保障が及ぶと解する。

 本件をみると、Xの制限されたのは信教の自由という精神的自由権であり、これは権利の性質上日本国民にのみ認められるものではない。

 したがって、Xにも憲法上の保障が及ぶ。

 

4 乙中学校の措置により、水泳授業の代替手段が認められず、X内申書の評価は低いものとなっている。しかし、校長の措置は、水泳の授業への参加自体を強いているわけでは無く、不参加自体は認められているのであるから、制約はないとも思える。

 しかし、内申書の評価は、進路の決定を左右する重要なものであり、現にX内申書の評価が下がることで高校進学を断念するという選択を余儀なくされている。したがって、Xの被る不利益は大きく、制約は存在する。

 

5 もっとも、信教の自由も、外部的行為を伴うものであるため絶対無制限のものではなく、公共の福祉(13)の観点から一定程度は制約され得る。では、いかなる審査基準を用いるべきか。

 まず、信教の自由は、個人の人格的生存にとって極めて重要なものである。次に、たしかに、校長の措置は、信仰に反する行動を強要したものではなく、信教の自由を直接的に制約するものではない。しかし、調査書の低評価により高校への進学を断念せざるを得なくなっているのだから、Xが被る不利益は極めて大きく、これを避けるには自己の信仰に反する行動を取ることを余儀なくさせられる。

 したがって、上記自由に対する制約が認められるか否かは、厳格に判断されるべきであり、上記自由を制約する目的がやむを得ないもので、手段が必要不可欠といえる場合には、合憲となる。

 

6 まず、代替措置をとらない理由として、教育の中立性に反するおそれがあることを挙げている。これは、代替措置をとることは、B教に対する「特権」にとなり、政教分離原則に抵触するとの主張だと考えられる。

 ここで、政教分離規定は、国家と宗教の完全な分離を目的としたものではなく、国家と宗教を制度的に分離することにより、間接的に信教の自由を確保するものである。そのため、国家との関わりあいが相当とされる限度を超える場合に限り、規制が必要であると考える。そして、相当とされる限度を超えるかは、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が特定の宗教を助長・促進するものであるか否かにより判断する。

 本件をみると、水泳の授業についてA教の生徒に特別の配慮をしたとしても、その目的は信教の自由への配慮にあり、それだけで特定の宗教を助長促進する効果を持つとはいえない。

 したがって、校長の上記見解は妥当ではない。

 

7 次に、代替措置をとらない理由として、代替措置の要望が真に信仰を理由とするものなのかどうかの判断が困難であることを挙げている。しかし、B教の戒律は女性は顔や手など一部を除き肌を露出してはいけないとされているのだからB教を信仰しているかは容易に判断可能であり、聞き取り調査等によっても容易に確認することができる。また、代替措置を取ったとしても水泳授業への参加者が減少するのみであり、水泳授業参加者に不利益となる事情は無いのだから、公平性を欠くとはいえない。また、信仰を理由として代替措置を希望する生徒は、せいぜいA国民の割合である4分の1にとどまると考えらる。

 したがって、目的がやむを得ないものとはいえない。

 また、Xが代替措置として自主的に見学しレポートを提出しているにもかかわらず、成績評価の際にこれを考慮していない。さらに、内申書の低評価には不参加が影響していることが明らかであり、それにより高校に進学できないという著しく不利益を被っている。したがって、代替措置を一切とらないことは手段として過剰であるといえ、手段が必要不可欠とはいえない。

 以上より、目的がやむを得ないもので、手段が必要不可欠といえないから、上記措置は違憲となる。

以上

 

 

予備試験R 1民法 解答例

第1 設問1

1 DCに対し、所有権に基づく返還請求権としての本件建物収去土地明渡請求をしている。かかる請求が認められるには、本件土地の自己所有、相手方占有が認められることが必要であるところ、Cは本件土地を占有している。ではDは所有権を有するか。

 CAから平成2041日に本件土地の贈与を受けているため、Cが所有者である以上、その後にAを相続し所有権を取得したBは、所有権を取得しないとも思える。

 もっとも、物権変動は、登記により初めて完全となり、登記がなければ不完全にしか効力を生じないから、登記がされない間は譲渡人は完全な無権利者とはならない(不完全物権変動説)。

 本件でも、Cへの移転登記をせずにAは死亡しているから、本件土地も相続財産となり、Bはこれを相続(896条本文)する。そのため、かかるBから抵当権の設定を受けて、その実行・競売を経たDは、所有権を取得する。また、「第三者」(177条)とは、当事者及びその包括承継人以外のものであって登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいい、Cはこれに当たるが、Dは所有権移転登記を経ているから、対抗できる。

 したがって、Dは、所有権を有するから、上記請求は認められ得る。

2 これに対し、Cは、占有権限として、法定地上権388条)があると主張すると考えられる。

 法定地上権の成立要件は、抵当権設定当時に土地上に建物が存在すること抵当権設定当時に建物と土地の所有者が同一であること、土地と建物の双方又は一方抵当権が設定されたこと、抵当権の実行によって土地と建物の所有者が異なったことである。

 本件を見ると、平成2861日の抵当権設定当時から、本件土地上には本件建物が存在した()。また、抵当権の実行により、土地の所有者はD、建物の所有者はCとなっている()。

 もっとも、Cは、上述の通り、所有権移転登記を経ていなかったため、土地の所有者とはいえず、を満たさないとも思える。

 しかし、Cの登記が未了であるとしても、所有権移転自体は生じているのであり、Cは、権利移転を退行することができないに過ぎない。そもそも、法定地上権の趣旨は、土地の建物のための用益権がないことで建物の存続が不可能となることによる社会経済的の損失を防止し、地上建物の存続を図ることにある。そして、かかる趣旨は所有権を対抗できない場合にも妥当する。

 したがって、上記要件を満たすから、Cの主張は認められる。

 以上より、Dの請求は認められない。

 

第2 設問2

 Cは、Dに対し、所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記手続請求をすることが考えられる。かかる請求が認められるには、本件土地の自己所有、相手方名義の抵当権設定登記の存在が認められることが必要であるところ、本件土地にはDを抵当権者とする抵当権設定登記が存在する。では、Cの所有権が認められるか。

1 上述のように、Cは生前のAから本件土地を贈与をされているが、D177条の「第三者」にあたるから、登記をしていないCDに対し対抗できない。

2 そこで、Cは、本件土地を時効所得(1622)しており、Dは時効取得前の第三者であるから、Dに対して登記なくして所有権を対抗できると主張することが考えられる。

1)時効取得の要件を満たすか。

 Cは、平成20831に本件土地の占有を開始し、平成30821日時点でも占有しており、10年が経過している。

 次に、「他人の物」といえるか。

 時効制度の趣旨は、永続した事実状態の尊重にあるところ、かかる趣旨は、登記を経ていないなど所有権の取得を第三者対抗できない等の場合において、自己の所有物についても妥当するのであり、162条が「他人の物」と規定したのは、通常は自己の物について取得時効を援用することは無意味であるからにすぎず、自己の物について時効取得の援用を許さない趣旨ではない。そこで、「他人の物」であることは例外的に要件とならない。

 また、平穏、公然、善意、無過失の推定(186条、188)を覆す事情はない。🌟

 したがって、時効取得が認められる。

2)では、登記なくして対抗できるか。

 ここで、時効取得は原始取得であり、時効取得者と時効取得前の第三者は物権変動の当事者とはならない。しかし、一方の権利取得の結果として他方が権利を失うという関係は物権変動の場合と同様である。そのため、時効取得前の第三者は、時効取得者との関係では物権変動の当事者と同視でき、「三者」には当たらない。したがって、時効取得者は、登記なくして時効取得を対抗できる。

 本件においても、Dは、時効完成前に抵当権の設定を受けたのであるから、Cは、登記なくして対抗できる。

 以上より、上記請求は認められる。

以上

予備試験H28 改正民法での解答例

1 DBに対する請求

1)支払済代金500万円の返還

 BDに対し、甲を500万円で売却しているが、Bは、甲の所有権を有していないから、BD間の契約は他人物売買契約となる。そのため、Bは、甲の所有権を取得しDに移転する義務を負う(561条)。しかし、甲の所有者であるCDに対し返還を求めている以上、かかる債務は履行できず、「債務の全部の履行が不能であるとき」(54211号)にあたる。また、DBに対し解除の意思表示をしている。

 したがって、Dは、解除に基づく原状回復請求権5451項)の行使として、本件売買契約における代金500万円の返還を請求できる。

2)増加代金分の費用40万円の支払

ア 上述のように、「債務の履行が不能であるとき」(4151項本文)に当たる。

イ 次に、Bは、甲の所有権の移転についてCの許諾が得られると軽信して売却を行っており、その後もCに他人物売買の追認を求める等のDに所有権を移転させるための努力を怠っている。そのため、B免責事由4151項但書)は認められない。

ウ また、「損害」とは、現に発生している利益状態と債務不履行がなかったら存在したであろう利益状態の差額をいう。Dは、B債務不履行がなければ、乙を購入し40万円を支出する必要はなかったのだから、これは「損害」に当たる。

エ そして、Bは、甲の所有権をDに移転できなければ、Dは代替物を購入する必要があることは、当然に認識することができたのだから、かかる損害は通常損害に当たる。

3)甲機械の価値増加分

 Dは、50万円について、不当利得返還請求(703条)をすることが考えられるが、Bは甲につき何ら権利を有しておらず、「利得」はない以上、かかる請求は認められない。

 

2 DCに対する請求

 Dは、Cに対し、甲機械の修理に要した費用について、有益費償還請求(196条)をすると考えられる。なお、「回復者」はBではなく甲の返還を求めたCであるから、Cに対して請求するべきである。

1)甲は故障しており稼働させるには修理が必要であった。そのため、通常の利用のために備えているべき状態を欠いていたといえ、かかる状態を確保するためには、その物の維持・回復にとどまらない措置が必要であった。したがって、Dの支出した費用は、有益費に当たる。🌟

2)そして、支出額30万円と増価額50万円とでは、前者の方が少ないから、回復者Cとしては、前者を選択すると考えらえる。

 なお、不当利得返還請求をすることも考えられるが、1961項は703条の特則であるから、196条が適用される以上、703条の適用は排除される。

 したがって、30万円の限度で、上記請求が認められる。

 

3 甲の使用料相当額25万円の支払請求

1 Bは、Dに対して、甲の使用利益を「果実」(5453項)として、上記請求をすると考えられる。

 ここで、他人物売買において、そもそも売主には使用権限がない以上、買主は売主に使用利益を返還する必要はないとも思える。しかし、原状回復義務の目的は、解除により契約が遡及的に無効となる結果として、契約に基づく給付がなかったのと同一の財産状態を回復することにあるから、売主に使用権限がなかったとしても買主は売主に対し使用利益の返還義務を負うと解するべきである。

 したがって、上記請求は認められる。

2 Cは、Dに対して、190条に基づき、上記請求をすることが考えられる。 Dは、所有権がCにあることを知っていたのだから「悪意の占有者」に当たり、かかる請求は認められる。

3 もっとも、Dが、使用利益について、BCの双方から請求を受けるという二重の負担を強いられるのは不当である。そこで、Dは、BCいずれか一方に返還すれば足りる。

 よって、BCによる上記25万円の支払請求権を自動債権として、Dの支払請求権と相殺することができる。

以上

予備R2法律実務基礎(刑事) 解答例

1 設問1 

1 (1

 Bは、事件当日、午後2時頃から午後945分頃まで外出しており、帰宅時に、大量に血を流して倒れているVを発見している。そこで、Vは、午後2時頃から午後945分頃までの間に、殺害されたと考えられる。*犯行時刻

 そして、Bは、外出する直前の午後145分頃に、V方一階居間にある応接テーブル上面を全体に渡り拭き掃除をしている。そこで、応接テーブルの上面からAの指紋が付着していたという事実は、Aが本件犯行時刻にV宅に赴いたという事実推認させる。これは、AV殺害のためV宅に赴き、その際にテーブルに触れ指紋を残したと考えることと矛盾しない。

 したがって、Aの指紋が付着していた事実は、A犯人性を推認させる間接事実となる。

 しかし、V宅にAが赴いたからといって、必ずしも殺害を犯したとはいえず、話し合いでだけをして帰ったという可能性がある。*反対仮説

 よって、推認力は限定的である。

2 (2

 信用性のあるAの友人Cの供述によれば、Aは、凶器として使用したナイフをO丁の竹やぶに捨てたと供述している。そして、かかるCの供述通り、Cの携帯には着信履歴があり、さらに、上記竹やぶからはVDND型と一致する血痕が付着したナイフが発見された。また、司法解剖医の供述から、当該ナイフはVの死因である胸部刺創を形成した凶器と認められる。

 そして、当該ナイフが上記竹やぶに捨てられていることは、A供述以前には、捜査官は知り得なかったのであり、Aの供述は、犯人しか知り得ない事実を述べたものといえ、秘密の暴露に当たる。したがって、Aの上記供述の信用性は認められる。

 本件犯行に用いられた凶器を竹やぶに捨てたAが、友人Cに対し「人をナイフで殺した」と述べているのであるから、AがナイフでVを刺したことが合理的に推認できる。

 したがって、Aの犯人性を十分に推認できる。

Aの供述の信用性あり∵秘密の暴露→Aが凶器を竹やぶに捨てた事実→Aが犯人

*百選76事件:草加事件民事上告審判決(自白の信用性)

 

2 設問2

1 (1

1)手段

 Aの弁護人は、類型証拠開示請求(刑事訴訟法316条の151項)という手段をとるべきである。

2)明らかにすべき内容

ア 同条31号イ

 まず、犯行時刻頃にV方から物音を聞いた者の供述録取書は「被告人以外の者の供述録取書」(同条16号)に当たる。そして、証拠14は、同時刻頃にV方から男性の大声が聞こえたとのW2の供述であり、その者以外のV方から物音が聞こえた旨の供述は、「警察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」に当たる。

 したがって、6号の証拠に当たる。*類型該当性

 次に、「開示の請求に関わる証拠を識別するに足りる事項」としては、「W2の他に犯行時刻頃にV方から物音を聞いた者の供述録取書等」とする。

イ 同条31号ロ

 本件では、AVに対する殺意の有無が争点となっている。W2の供述は「殺すぞ」などと怒鳴りつける男性の声を聞いたというものであるところ、殺意の有無との関係において、W2の供述の証明力を判断するため、これと矛盾する供述の有無を確認することが重要である。また、被告人の防御のため、当該開示が必要である。

 よって、弁護人としては、以上の事項を明らかにするべきである。

 

2 (2

 上記の通り、証拠開示の重要性と必要性は認められる。また、V方から物音が聞こえたという事実の開示によるプライバシー侵害の程度は軽微であり「弊害」には当たらない。したがって、証拠開示は「相当」と認められるため、検察官は証拠を開示したと考えられる。

 

3 設問3

 Cの証言のうち「むかついたので人をナイフで刺してやった」というAの供述は、伝聞証拠にあたり、証拠能力が否定されないか。

 供述証拠は、知覚・記憶・叙述を経るため、誤りの入るおそれが高く、反対尋問(372項前段参照)で誤りを是正する必要がある。そこで、伝聞証拠とは、公判廷外の原供述を内容とする証拠であって原供述内容の真実性の証明に用いるものをいう。また、内容の真実性が問題となるかどうかは、要証事実との関係で相対的に決する。

 本件では、Aの殺意の有無が争点となっているから、検察官は、Cの証言により、Aの殺意を立証しようとしていると考えられる。そこで、上記Aの供述は、内容の真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たる。

 もっとも、Aの供述は、不利益な事実の承認を内容とするものであり、任意性も認められるから、3241項が準用する3221により、伝聞例外の要件を充足する。

 したがって、裁判所は証拠排除決定をするべきではない。

 

4 設問4

1 まず、被疑事実は殺人罪であるから、891号にあたり、必要的保釈は認められない。そこで、Aには葬儀に出ることができないという不利益が生じるから、職権保釈が認められ得る。

2 次に、勾留の執行停止(95条)が考えられる。Aの父親が死亡しておりAは父の葬儀にだけは出席したいと考えている。葬儀は一度だけの儀式であり、かかるAの希望は人情としては尊重されるべきであるから、かかる措置は、「適当」といえる。

 もっとも、上記の手段は、いずれも裁判所の職権にのみ行われるもので、当事者に申立権のはないから、当事者は職権発動を促す申出ができるに留まる。

以上