ぶろぐ

受かる受かる受かる

予備H29民法【解答例】 94②・110類推、原賃貸借の合意解除後の転貸借

親ガメ(賃貸借)が合意解除された後の子ガメ(転貸借)の問題、みんな気になると思うのに、改正民法でも明文がないのはなぜなんでしょう?不思議です、、。

 

1 設問1

 Cは、Aに対し、所有権に基づく妨害排除請求権としての本件登記抹消登記手続請求をすると考えられる。ここで、Cの請求が認められるためには、Cが甲建物の所有権を有している必要がある。

1 Cは、平成231213日、Bから、甲建物を500万円で購入しており、甲建物の所有権を取得したと主張する。しかし、BC間の売買に先立ち、Aは、甲建物を1000万円で購入し、その後に、譲渡担保を登記原因とする所有権移転登記を具備している。

 真実には売買を登記原因とするべきであったのに、譲渡担保を登記原因としているところ、Aが具備した登記は実体的権利関係に合致しないから、Aの登記の有効性が問題となる。もっとも、譲渡担保であってもAに所有権が移転することには変わりがなく、Aの登記はこいう建物の所有権がAにあるという権利関係を公示するに足りるものである。したがって、かかる登記も有効と考える。*実体的権利関係に合致しない登記も有効

 そこで、Aは、登記を具備した時点で、確定的に甲建物の所有権を取得しているから、Bは無権利者となる。したがって、かかるBと契約をしたに過ぎないCは所有権を取得することができない。

2 もっとも、Cは、Aのために譲渡担保が設定されているという外観を信頼して、取引に入っている。そこで、Cは、自己が942項の「第三者」として保護されると主張すると考えられる。

 本件ではAB間に通謀は無いため、同条を直接適用することはできない。しかし、同条は、(虚偽の外観作出につき本人に帰責性がある場合に、かかる外観を信頼した第三者を保護するという)権利外観法理の一環であるから、虚偽の外観、虚偽の外観の作出に対する真の権利者の帰責性、三者の信頼があれば、同条の類推適用が認められ、第三者が保護される。

 本件を見ると、A名義の登記という虚偽の外観が存在する()。次に、Aは、BがAに甲建物を譲渡する旨の譲渡担保設定契約書と、譲渡担保を登記原因とする甲建物についての所有権移転登記の登記申請書に署名・押印しており、虚偽の外観作出に寄与しているところ、帰責性が認められる()。

 次に、942項は第三者の保護要件を善意で足りるとしているが、類推適用の場合には、直接適用の場合より本人の帰責性は小さい。そこで、110条の類推適用により、権利外観法理における原則の通り、第三者の保護要件は善意無過失とするべきである。

 本件では、CAが譲渡担保権者でないと知らなかったことにつき過失がある()。

 したがって、Cは、「第三者」として保護されない。

 よって、Cの上記請求は認められない。

 

2 設問2

1 CE間の法律関係

 CD間の賃貸借は合意解除されているから、Cは合意解除の効果をEに対抗することはできない(6131項本文)。そこで、賃貸人と転借人の法的関係が問題となる。

 ここで、賃貸人と転借人には直接の法的根拠がない以上、賃貸人は賃料相当額を不当利得(703)として請求できるようにも思えるが、これでは法律関係が複雑となる。そこで、転借人と賃貸人の間に、転貸借契約がそのまま移行すると解する。このように解しても、転貸人は転貸借関係からの離脱を望んでいるし、賃貸人もそもそも合意解除を対抗できないのだから、当事者に不利益は生じない。*直接関係肯定説

 本件においても、DE間の転貸借契約が、Cを賃貸人、Eを賃借人として、CE間に承継されると解する。

2 CEに対する請求

 上述の理由から、Cは、Eに対し、従前のDE間契約におけるのと同様に月15万円の賃料を請求できるにとどまる。

3 ECに対する請求

 Eが甲建物の修理のために支出した30万円は、物の保存・管理に必要な費用であり、「必要費」(608)に当たる。そこで、Eは、必要費償還請求権(6081項)の行使として、30万円の修補費用の請求をしていると考えられる。

 まず、CD間の転貸借契約においては、通常の必要日はDが負担するとの特約が付されているが、新たに成立する賃貸借契約はDE間契約が CE間に承継されたものであるから、CD間の特約は承継されない

 次に、必要費を支出した時点で「直ちに」償還請求権が発生するから、「賃貸人」とは当時の賃貸人を指し、新賃貸人はこれに当たらないとも思える。しかし、同項の趣旨は、賃借人の利益に配慮する点にあるから、新賃貸人に対し償還請求することを否定する理由はない。

 したがって、上記請求は認められる。

以上