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事例演習刑事訴訟法【設問9】解答例

 Kは、捜索差押許可状のないまま、X方の捜索を実施し(以下、「本件捜索」という。)、天秤等を差し押さえている(以下、「本件差押え」という)が、捜索・差押えにあたっては、原則として、捜索差押許可状(憲法35条、2181項)が必要である。そこで、本件捜索・差押えが、逮捕に伴う捜索・差押え(2201項)の要件を満たせば、無令状で行うことは適法となる。

 逮捕に伴う捜索・差押え(2201項)が、令状主義(憲法35条)の例外として許容される根拠は、逮捕の現場には、被疑事実に関する証拠の存在する蓋然性が高いことから、これを保全する必要性が高いこことにある。そして、かかる根拠から、「逮捕の現場」とは、逮捕場所と同一の管理権の及ぶ範囲内の場所及びそこにある物をいう。また、「逮捕する場合」とは、単なる時点よりも幅のある、逮捕するをいうのであり、逮捕との時間的接着性を必要とするが、逮捕着手時の前後関係は問われない。

1 本件捜索について

1 本件捜索は、Xを現行犯逮捕(213条)をしたことに引き続いて行われたものであるから、逮捕との時間的接着性が認められる。したがって、「逮捕する場合」にあたる。

2 Kは、X方の応接間において、Xを現行犯逮捕しているところ、X方の各部屋は、逮捕場所と同一の管理権の及ぶ範囲といえるから、「逮捕の現場」に当たる。

 したがって、本件捜索は、逮捕に伴う捜索として、適法となる。

2 本件差押えについて

1 本件差押えは、上述と同様に、「逮捕する場合」に、「逮捕の現場」で行われたといえる。

2 そして、上記の逮捕に伴う捜索・差押えが許容される根拠から、逮捕に伴う差押えの目的物は、逮捕の基礎となった被疑事実との関連性を有するものであることが必要となる。

 本件をみると、Xは、覚醒剤所持の被疑事実により現行犯逮捕されている。そして、天秤は、覚醒剤の使用にあたって、その使用量を調整するために用いられるものであることから、X覚醒剤を所持していたことを推認させるものとして、被疑事実との関連性が認められる。同様に、注射器は、覚醒剤を体内に入れるために用いられるものであり、ビニール袋は、覚醒剤を保管し持ち運ぶために用いるものであるから、被疑事実との関連性が認められる。

 したがって、いずれの差押え目的物も、被疑事実との関連性が認められる。

3 よって、本件差押えは適法となる。

以上