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事例演習刑事訴訟法【設問30】解答例

排除法則の論証を微妙な位置に入れてることには、少し違和感があります。改善の余地がありそうです。

 まず、警察官Kが、嫌がるXを無理矢理パトカーの後部座席に押し込み警察署に同行した行為は、実質的逮捕(1991項)にあたり、令状主義(憲法33条、1991項)に反し違法である。

 そこで、尿の鑑定書は、違法収集証拠として、証拠能力が否定されないか。直接の証拠採集手続に違法な点がなくとも、先行する違法な手続によりもたらされた状態を利用して収集された証拠の証拠能力が、どのように判断されるべきかが問題となる。

1 ここで、違法な先行手続後行手続との間に、関連性が認められれば、先行手続の違法性の程度が、後行手続の適法性判断にあたって考慮され、後行手続が違法性を帯びる場合には、後行手続について排除法則を適用し、当該証拠の証拠能力を判断する。これを本件につき検討する。*

2 本件採尿手続は、上記の実質逮捕という違法な行為により、Xを警察署に同行後、直ちに行われており、違法な先行手続によりもたらされた状態を直接利用している。したがって、違法な実質逮捕と採尿手続には密接な関連性がある。そうすると、本件採尿手続は違法性を帯びることとなる()。

3 次に、採尿手続に排除法則を適用する。

 ここで、適正手続の保障(憲法31)、司法の廉潔性、将来における違法捜査抑制の見地から、a 証拠の収集手続令状主義の精神を忘却する重大な違法があり、b これを証拠として許容することが将来における違法捜査抑制の見地から相当でないと認められる場合には、証拠能力が否定される。

4 たしかに、本件の実質逮捕は、有形力が行使によるもので、令状主義に反するのであり、違法の程度は小さいとはいえない。しかし、Kによる有形力の行使はXをパトカーに押し込んだという軽微なものであり、K令状主義を潜脱する意図を有していたとは認められない。また、採尿手続自体は何ら強制によるものではなくXは任意にこれを提出している。したがって、採尿手続の違法は重大とまではいえない(a)。また、尿の鑑定書をXの罪証に供することが、将来における違法捜査抑制の見地から相当でないとは認められない(b)。

 したがって、本件鑑定書の証拠能力は認められる()。

 よって、裁判所は、尿の鑑定書をXの公判で証拠として用いることができる。

以上

 

*事例演習刑事訴訟法P415